偏好文庫-「好き」を解釈し続けるメディア-

いろんな“好き”を愛するための(ひとり)メディア、偏好文庫です

有村竜太朗「寫眞館GELATINによる幽園園寫とその幽園舞台 寫眞展『幽園地 / yûenti』」(22年7月28日〜8月1日、早稲田スコットホールギャラリー)

ヴィジュアル系シューゲイザーバンドPlastic Treeのボーカル有村竜太朗を10年以上撮り続けている写真家・寫眞館ゼラチンが、東北の廃遊園地で彼を映した連作写真を展示する写真展。会場は敬虔なキリスト教徒であったとある女性が、伴侶を弔うために建てたという教会の半地下にあるギャラリー。真夏の白昼に映える煉瓦造りの洋館の小さな白い扉をくぐると、秘密部屋のような想像以上に広い空間が広がる。


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会場は3つのゾーンに分かれており、それぞれのエリアに合わせた有村手製によるアンビエント音楽がBGMとして流れている。ギャラリーの奥には照明が暗転された部屋もあって、そこでは展示写真をスマホライトで照らしながら鑑賞するインスタレーション的な試みも。

寫眞館ゼラチンの写真は、現実を鮮明に映し出すいまどきのデジタル写真とは一線を画していて、目に見えた景色の質感を映し出す“体感的に”リアルな写真だ。そして、すべての展示写真の根源に漂っていたのは、Plastic Treeの音楽性ともリンクする淋しさだった。ヴィジュアル系のパブリックイメージとは一線を画す、日本の廃墟のような白昼のうら淋しさ。生命を全うした者たちの陽の気が、花が枯れるように朽ちていった残り香の淋しさ。

僕が一番印象的だったのは、『日々の泡』がテーマの連作のうちの一枚。藁の赤ん坊を乳母車にのせ、野原を往く白い衣装の有村の姿には、まるで己の幼気を探しに来たような、それとも捨てに来たかのような、得も言われぬ物悲しさがあった。


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