HAUSNAILS『Fantasy』
素性を明かさないミステリアスさを売りにしたアーティストが人気を集める反面、“等身
大”という言葉は歳若いミュージシャンを売り込む際、現在に至るまで都合よく使われ続けているフレーズだ。メンバー全員が 1999 年生まれの4人組ミクスチャーロックバンドHAUSNAILSは、最も“等身大”から近い場所に佇みながらもその期待を真っ向から裏切るアプローチで存在感を示す。
古代中国思想で神獣として祀られる“四神”をテーマに、メンバーそれぞれが作詞作曲を務め持ち寄った4曲は、月並みな言い回しを使うならば個性そのもの。リードトラック『ジャンプスケア』には平清澄(Vo/Ba)による歌謡曲的なメロディセンスと歌詞の言葉遊び、そして細やか且つ大胆なトラックメイキングがこれでもかと詰め込まれ、正にロックバンドらしい“勝負曲”といった趣きを示してくるが、九野ヒロ(Dr)が作詞作曲を務めた『獰猛』では恋の駆け引きをスウィングするジャズやフュージョンサウンドを駆使した音像とツインボーカルによるスリリングなボーカル回しで表現。
八重樫藤丸(Gt)によるメロコアナンバー『プラズマ』ではロックバンドとしての演奏力の伸びしろの多さに嘆息させられる。更に目を見張るのは、4曲目に配置された源壱将
(Vo/Gt)作詞作曲による『水泳8級』。タイトルからは想像もつかないシンプルで壮大な
ロックバラードになっていて、通して聴くとそのバラエティの豊かさに「今の自分たちな
らなんだって出来る」という自信を言外に見せつけられたような痛快さだ。
メンバーそれぞれのロマンティシズムと、今という時代を生きる若者たちのリアルな感情が結晶化された、“等身大”でありながらもそれ以上の熱情を湛えた渾身の4曲。
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